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 …What's?!


『えごめん話が見えない何のチケット?』

『飛行機に決まってるじゃん!再来月の五日ね!』


(おいおいマジかよ?!)


 この時点で娘は四か月。混合ではありますが、まだ母乳も与えています。

 生後半年にも満たない赤ちゃんを連れて飛行機に乗れと?!


(気でも狂ったか慎也?!)


『えごめんどういう事かな?娘を連れて飛行機は普通に無理でしょ』


 私は優しくも、キッパリとその提案を拒否しました。

 しかし夫はそんな私の拒絶を物ともせず、猫撫で声で甘えてきます。


『だって俺もさみしいんだよォ!』



(知るかーーーーーーーーーー!)


 

 脊髄反射でそう突っ込みたいのを堪えた私を、夫はどう勘違いしたのか?

 さらに甘えた声でこう言い放ちました。


『こっちの景色もあいかに見せてやりたいしさァ』



(今は映像で充分でーーーーーーーす!)


 心の中ではハリセンをブンブン振り回しつつも、ルンルンな夫にどう言えばわかってもらえるのか、私は必死で言葉を探していました。


『気持ちは嬉しいけど今じゃないかな


 尻すぼみつつも再度、今は私たちはそちらに行けないとはっきり伝えたところ


『ンだよ喜んでくれないの?!異国で一人頑張ってる夫に会いにも来ないのかよ!』


 先ほどまでのご機嫌が嘘のように、豹変した夫は私を非難しだしました。


『だっていきなりすぎるよ!それに娘の荷物だって凄い事になるし抱っこしないと寝ないし、私一人で連れていく自信なんて無いよ!』


 しかし私も必死です。おむつやミルク、着替えにおもちゃに大荷物で見知らぬ土地に行くなんて絶対に無理。

 それに、バスや電車ですら気を使うのに、数時間とはいえ飛行機でもし娘が泣きだしたら?!

 

(ゾッとする!)

 

 小さい体のどこにこんなパワーが秘められているんだ!?というくらい、全力で泣く娘。

 周囲からの冷たい視線、居た堪れない空気。それが数時間

 想像しただけで、背筋が凍ります。


『たった数時間くらい我慢しろよ!』

いやいや、赤ちゃんを飛行機に乗せるのはできるだけ避けた方がいいよ

『せっかくチケット取ってやったのに!あいかがそんな冷たい女だと思わなかったわ!』

『気持ちは嬉しいってば!私だって娘だって慎也に会いたいに決まってる!でも今は流石に無理だって!』


 私の必死の説得もどこ吹く風。

 全く聞く耳を持たない夫はブチギレるだけで全く話になりません。


『もういいよ!マジでありえねー!』


 結局話し合いは一度も交わる事なく、夫は一方的に通話を打ち切ってしまいました。

 一応こちらからかけ直しはしましたが、その後は電話を取ってもらえず。


(酔っていたとはいえあんな言い方しなくても!)


 夫が私に対してあそこまで一方的に要求を押し付ける事など、これまで一度もありませんでした。

 

(私そこまでわがまま言ってる?)

 

 もしかしたら私は、夫を蔑ろにし過ぎているのかも

 確かに、最近は連絡の頻度も低くなってるし

 慎也がさみしいと感じるのも、仕方ないのかな


 ふと、そんな考えが頭をよぎります。あまり寝ていない頭は全く回らず、ただただ精神的にも肉体的にもぎりぎりにまで疲れている状態の私は、気付いた時にはハラハラと涙をこぼしていました。

 


(でも、この状態で旅行とか無理だけどな!)


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