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 翌朝、扉の開く音と夫の声。


 現地語?のようで何を話しているかはわかりませんでした。そのままベッドルームに戻ってきた夫は、にこやかに「おはよう!」と。


「よく眠れた?時差ぼけ大丈夫?今同僚が朝食持ってきてくれたから、食べよ!」


 がさがさと紙袋から某有名チェーン店のコーヒーとパンが出てきました。


(さっきの声はその同僚?さんの声だったのか


 言われるままに軽く朝食をとると、


「じゃあ、でかけよっか」


 と外出することに。


 昨日の失敗を踏まえて、私は夫に聞きました。


「今日はどこに行くの?銀行?大使館?何を持っていったらいいかな?」


 すると夫は少しむっとしたような表情で、


「そういうのいいから。あいかは黙ってついてきてくれればいいから。」


 と一蹴。


(それで気がきかない女だとか暴言吐いたの誰だよ!)


 昨日の夫の暴言を思い出し朝からイラっとしましたが、何とか耐えて車に乗りました。


 そのまま鼻歌をフンフンさせているご機嫌の夫に連れていかれたのは、いわゆる観光名所&夫が大好きな寺院など


「ここ、いいでしょ!何回見ても圧倒されるわー!俺もこーゆーの建てて後世に残したい!」

「あいかにも見せたかったんだよね!ヤバくない?!」

「ここも凄いっしょ?!」

「ここは観光客にはあんま知られてないけどさー!」


 どんどんしらけていく私には全く気付くそぶりすらなく、子供のようにはしゃぐ夫の姿を見て、


(ああ、ただ慎也が来たかっただけなんだなぁ


とぼんやり思いました。


 勿論私だって観光名所が嫌いなわけではありません。

 大きな建造物は好きだし、せっかく来たんだからここは見ておかないと!という夫の気持ちもわからないわけでもありません。


で・す・が!


<私がいないと手続きできない書類>とか、<本人確認が必要な銀行>は?!


それが今回の旅のメインミッションだったはずなのに!)


  ウキウキとあちこち案内する夫に、恐る恐る私は問いかけました。


「ねぇ、観光もいいけど、手続きの時間大丈夫?!私もう明日の夕方には帰国するんだよ?!」


 しかし夫は全く焦った様子もなく、


「まだそんな時間経ってないじゃん!」

「あとでいいよぉー!」

「まだやってるから大丈夫!」

「俺のスケジューリングは完璧だから!」


と繰り返すのみ。挙句の果てには


「そんな気持ちで観光するなんて俺にも名所にも失礼だと思わないの?!」


とブチ切れをかましてくる始末!


ちょっと何言ってるかわかんない


「あのさ?そりゃあ私も観光したいよ?!せっかく来たんだしね?


 それにここは見ておいてって夫のもてなしの気持ちも嬉しいよ?!


 でもやることやってからじゃないと不安なんだよ!」


 私は必死で訴えます。ここまで来て、手続き出来ませんなんてことになったら


 しかしそんな風に焦っているのは私だけだったようで、夫から返ってきたのは、舌打ちと盛大なため息飲みでした。


 とはいえ時刻はすでに夕方を過ぎています。


「わかったよ!じゃあ一回帰ろ!」


 ようやく観光を切り上げ、一度自宅に書類などを取りに行くことに。


やっっっっと本来の目的が果たせると思って安心したのも束の間



「ね、あいかぁ❤️


自宅に戻るなり


(また盛ってきやがったこいつ!)


「ちょっと時間は?!日本みたいに夕方には閉まっちゃうんじゃないの?!早く行こうよ!」


「大丈夫だって!こんなおっぱい大きくなったあいか見て、普通じゃいられないでしょ!」


「でも!」


「いいから黙れって!」


 結局そのまま強引に行為に及ばれ、終わったらまたさっさとシャワーを浴びに行く夫。


(クソが!)


 私は心の中で某お笑い芸人さんを召喚しつつ、自分の身支度も済ませました。シャワーから戻った夫は、スマホをカチカチといじると、


「あ、もう今日銀行やってないわ。大使館もアポいるみたいだから明日にしよ」


と人の気も知らないで呑気に言いました。


「もう明日しかないんだけど!本当に大丈夫なの?!」


「大丈夫だって!しばらく出来なかったんだし、ちょっとくらい良いじゃん!」


「そうだけど私も調べてみようか?どの手続きが必要なの?!」


そういって私もスマホに手を伸ばした瞬間、聞こえてきたのは


ハッ!


鼻で笑う夫の声。


「あいかに何ができるわけ?!英語も現地語もわからないバカのくせに何言ってんの?!」

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