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 ここに来るまではまだ少し夫を信じたい気持ちもあったのですが、流石にもう諦めました。


 私の夫は、自分のわがままのために、こんなついてはいけない嘘までつく男なんだと。


 急激に冷めていく気持ちが表情にも出ていたのか、焦った様子の夫が


「ごめんちょっとトイレ!ここで待ってて」


 と言うので、ひとまず空港内のカフェで待つことに。


嘘で私と娘を引き離すだなんて!)


 とにかく夫が戻ってきたら、どう言うつもりなのか聞いてみよう。


 どうせここは空港。


 外面だけは良い夫は、こんな公衆の面前で暴言吐いたり暴力振るったりなんて出来ないに違いない。


(もしやられたとしても飛行機に乗ればすぐに日本に帰れるし!)


 と、ふつふつと湧く怒りに身を任せていると、夫が戻ってきました。


 さあどうやって切り出すか!と夫の方に目を向けると、夫の手には先程のブランド店の袋。


「はい!出産&育児、いつもお疲れ様!乳牛ママにプレゼントだよ!」


(は?)


 開けてみると、そこには先程試着した某ブランドのシルバーネックレスが入っていました。


 先程までの怒りと、目の前の美しいネックレスのギャップに私が何も言えずにいると夫は私が【感激のあまり】言葉が出ないのだと勘違いしたようで


「ごめんね手続きとか嘘だったんだ。いつも頑張ってるあいかが、頑張りすぎて産後ウツとかになったりしないか俺心配でさ?ちょっとでも自由な時間を持って欲しかったんだよね!だからこれは


俺からのサプライズプレゼント旅行ってやつだったんだ!」


今世紀最大のドヤ顔でそう言い放ちました!


「いやー色々大変だったけど、楽しかったでしょ?!リフレッシュできたんじゃない?!」


ね?ね?と同意を求めてくる夫でしたが、いろんな感情がごちゃ混ぜになってしまい、私は…何も言葉が出てきません。


「あとこれ。」


と言って渡されたのは封筒。中には二十万円が入っていました。


「銀行の送金の件はマジなんだよね。ちょっと今海外送金がややこしくなってて出来ないから、これはとりあえず当座の生活費」


 良い夫でしょ俺オーラ全開で、私を見つめてくる彼を見て


 私に込み上げてきたのは、怒り。


(「マジでー?!えーやだウレシー!」とでも言うと思ったの?!)



 私が自分の身と時間を削って娘のために過ごしてきたこの半年を



(自分のわがままを通すための方便に使うだなんて!)


気持ちは嬉しくない、わけじゃない。でも、嘘はよくないと思う。娘と離れるのがどれだけ辛かったかわかる?!母乳を絞って捨てるたびに、罪悪感で心が押し潰されそうだったよこの3日間!」


 震える声で、でもきっぱりと夫に伝えました。


「プレゼントもありがとう。お金生活費も受け取っておくね。でも今はちょっと夫と冷静に向き合うのは無理みたい。まだ時間早いけどゲートに先行くね」


 そう言って席を立とうとしました。もちろん心の中では


(絶対に許せない…!)


と言う気持ちでいっぱいでしたが、これ以上夫と話していたら涙腺崩壊する!と思った私。


 しかし夫はそんな私の言葉に首を傾げています。


「なんで?」


 夫は不満しかないという顔で私に告げました。


「もっと喜ぶだろ?普通?!夫のサプライズだぞ?!嬉しくないの?!いくらかかったと思ってるんだよ!」


は〜い!モラスイッチ、オン!


 私は、それでも冷静に夫に切り返しました。


「頼んでないよね?」


「ぁあ?!」


「リフレッシュしたいなんて頼んでないよね?!嘘ついてまで母親と娘引き離して、自分の行きたいところに連れて行って、やるだけやって


どうやったらそんな考えになるのか、本気でわからない!」


 声こそ抑えていたものの、私の本気の怒りは伝わったのか、夫は少しトーンダウンした声でボソボソと言い訳を始めました。


「だってあいか言ってたじゃん!ゆっくり寝たり食べたりしたいって!だから叶えてやったんじゃん!なのになんで怒ってんの!?


 ここは普通喜ぶところでしょ!俺に感謝するところじゃないの?!


 わざわざチケットとか観光とかプレゼントとか、俺スッゲー頑張ってあいかのために


「ゆっくり寝たり食べたりしたいのは、子育て中の母親なら誰だって思ってることだよ!

 

 だからって嘘ついて呼び出すのはおかしいでしょ!もっと落ち着いてから娘と一緒に観光したかったよ!


 それに、私のためって言ってるけど、行くところもやったことも全部慎也がやりたかったことじゃん!」


 一生懸命私の気持ちを伝えてみたものの、夫は首を傾げるばかり。


(これ以上話しても堂々巡りにしかならないかも)


 そう思った私は、荷物を持って立ち上がりました。


「少しでも夫の事を信じた私がバカみたいだよ」


 しかし、私のこの明確な拒絶だけは夫にも伝わったようで


「なんだよそれ!俺が誰のために!お前マジで最低だな!」


 夫はプルプル震え出しました。


「俺、仕事残ってるからもう行くわ。あいかって、俺のこと都合のいいATMだって思ってるんだな。なんでこんな女と結婚なんてしたんだろ、俺」


 吐き捨てるように呟くと、こちらを睨んでくる夫。


反論したかったけど、どうせまたキレられるだけか、と思った私は、


反論する

さっさと日本に帰る 


 悩む事なく【さっさと日本に帰る】コマンドを選択。


 反論もせず、黙って夫を睨み返します。そんな私にもう何を言っても無駄だと悟ったのか、夫は立ち上がってカフェから無言で出ていきました。私の心の中は、怒りと悲しみと呆れと


(本当に、何のためにこんなところまで来たんだろ。ま、でももう数時間で日本に帰れる!娘にも会えるし、慎也とも離れられるし!)


 そんな安堵の気持ちが渦巻いていました。


 結局私は一人で搭乗時間まで両親や娘へのお土産を探したり搾乳したりして時間を潰し、無事に帰国することが出来たのでした。


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