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夫はそう言って私を抱きしめると、「じゃ、仕事行ってくる」と言いながら出ていきました。


 母はそんな私を見て心配そうにしていましたが、私はとにかく夫は仕事で忙しい、娘にも寂しい思いをさせるけど、それも家族のために頑張ってくれているから仕方ないのだ、と自分に言い聞かせ、気持ちを持ち直して母親には「仕方ないよね」と笑顔で返します。


 すると、ちょうどその時、恵理子さんからLINEが。


『こんばんは。少しお話ししたいことがあるんですが、今お時間大丈夫ですか?』


『大丈夫ですよ。こちらからかけますね』


 私は久しぶりに恵理子さんと通話することに。


『もしもし恵理子さん?」


『もしもしあいかさん、突然ごめんなさい!言おうか言うまいか迷ったんですけど


 挨拶もそこそこに、恵理子さんはパーティーでの話をしてくれました。


『あいかさんが出席されないのに、伊藤さんの隣には若い女性がいらっしゃってしかもとても仲良さそうに見えたもので


以前あいかさんが伊藤さんの様子を知りたいって仰っていたのは、もしかしてこういう事を聞きたかったんじゃなかったのかなって!」


(恵理子さん、正解!)


 恵理子さんは続けます。


『私お話を額面通り受け取ってしまって本当に気がきかなくて恥ずかしいです


『そんな事!ご協力頂けただけて私はとても心強かったですし、ありがたかったですよ!』


『私せめてパーティーでのことはしっかりあいかさんにもお伝えしないと、と思って


 ここで恵理子さんから衝撃の一言が。


『私、その場で彼女に声をかけてみたんです!』


本当に?!私ですらホテルで見かけた時、あまりにもショックで声をかけるなんて出来なかったのに!恵理子さんすごい!)


『彼女、現地採用の通訳さんで、今回の来日は日本語の研修も兼ねてだって言ってました』


『そうなんですね、実は私も現地に行った時、彼女には一度お会いしてるんです』


(寝起きのどすっぴんでね!)


『でもおかしくないですか?そんな現地採用の通訳さんまで会社がお金を出して研修って中村に聞いてもそんな話は聞いたことないって言うんです』


『ですよね私もおかしいと思いました』


『だからそれは会社負担で?!って私、聞いてみたんです。そしたら


伊藤さんが上に掛け合って経費として半額は会社に出させたって!!!!』


(ええええええええーーーーーー?!??!)


 会社に掛け合ってと言うだけでも私としては信じられない気持ちだったのですが、恵理子さんの次の一言に、私は度肝を抜かれました。


『残りの半額は?って聞いたら。「そりゃ俺(伊藤さん)が出しましたよ!俺のパートナーですから!(ドヤ)」って


(なんとなくもうそのドヤ顔の夫が目に浮かぶようだわ


『そそれで?』


『あまり詮索はしたくないんですけど、それってどういう意味ですか?奥様はご存知なんですか?って私、聞いてみたんですけど


(ですよね?!?!普通はそんな言い方しませんよね?!)


 固唾を飲んで、恵理子さんの次の言葉を待つ私。


『伊藤さんは、「うちの妻は理解がありますんでね!(ドヤ)今日この場にいないことでお分かりでしょう?」って仰ったんです。でも私朝あいかさんからのメールで、あいかさんがパーティーの存在自体を知らなかったんじゃないのかなって。ですよね?!』


(理解がありますって何よ?!それに


 興奮した様子の恵理子さん。私は思わず謝罪の言葉を口にしました。


すみません恵理子さんにそこまで探るような真似をさせてしまって


『いえそんな!って違うんですあいかさん!驚くのはここからなんです!その女性なんですけど、左手の薬指に指輪をされていたんですね』


『?既婚者だったって事ですか?』


『そう思いますよね?!それなのに伊藤さんにパートナーだとか紹介されてるのはどう考えてもおかしいし。


だから私、彼女にご結婚されているんですか?って聞いてみたんです!』


それはまた直球ですね笑』


 私のツッコミはますます興奮する恵理子さんには拾ってもらえず


『そうしたらね!結婚はまだです。もうすぐします。別の国の人だから手続き大変ですってこれって、まさか伊藤さんが相手ってことじゃないですよね?!』


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