
『別にやましいことなんてないし。
そもそもどうやって俺の<有責>とやらを探すつもりかわからないけど…人から聞いた話とか憶測で周りに迷惑かけたりするなよな!
あいかは黙って俺の言う通りに日本で家庭を守ってればそれでいいんだよ!』
(何時代の夫婦だよ!)
…絶対に不倫は認めないでござるマンとなった夫には、何を言っても無駄でした。
(こうなったら、現場を押さえるしかない!)
数日後…
「と言うような状況になりました…」
キッズスペース併設のカフェで、娘を追いながら恵理子さんにことの顛末を説明しました。
「確かに証拠としてはまだ弱いですよね…。ホテルへの出入りとかメールのやりとりとか、不貞の証拠ってどんなものでしたっけ?」
私はすぐにスマホで検索。
(1)写真・音声・動画(性行為中やホテルへの出入り複数回、一緒に旅行している写真など)
(2)クレジットカードの明細やレシート(ホテルやその周辺で頻繁に使われている、またはいかがわしいグッズの購入)
(3)メールや手紙(肉体関係があったことがわかる内容など)
(4)SNSや日記、カレンダー(浮気相手とのスケジュールやツーショットの投稿で不貞がわかるようなもの)
など、重要なのは“性行為(肉体関係)を確認できる、ないし推認できる“と言うことのようです。
いかがわしいグッズの購入についてはネットスーパーの履歴で立証できるけど…それ以外は…。
「こういう確たる証拠がないと絶対に認めないってことですよね…怖いなあ…」
「…認めたら負けだと思っているのか…離婚はしたくないって。
どうしたいんでしょうね?ここまできたら…私、絶対にはっきりさせたいんですよね。
モナと本当に結婚しているんだとしたら…その時はちゃんと慰謝料を払ってもらいたい。
娘のためにも離婚して、養育費を請求したい…!」
「うん、あいかさんの要求はもっともだと思いますよ。でも証拠が…。
弁護士さんをつけるにも、探偵を雇うにもちょっと…高額になりそうですよね」
(そもそも探偵って海外まで派遣できるものなの?!)
働き出したとはいえ、まだ派遣の身。
実家住まいで楽をさせてもらってはいるけど、夫から渡される生活費の額も決して楽をできるようなものではありません。
弁護士や探偵を高額で雇うなんて…そんな金銭的に余裕があるような状態ではなかったのです。
夫はもちろん、そんな事情もわかっていたのではないでしょうか。
「多分、夫の金銭的な締め付けって…こう言う時に使えるお金を持たせたくないって
言うのもあると思うんですよね…」
「伊藤さんの稼ぎとか把握できないんですか?」
「…わからないです。夫の口座に入ってしまうし…何度も教えて欲しいって言ったんですけど、
決まった額の生活費を渡しているんだからそれでいいだろう、あいかはやりくりが下手だから…って」
「うわぁ…」
恵理子さんが心の底から引いているのがわかりました。私も今なら「ないわ…」と思います。
「私、行こうかな…日本じゃ絶対尻尾出さないだろうし…現地に突撃してみようかな…」
「えぇええええええええええ?!?!」
旅費の事、娘の事、仕事の事、色々あってなかなか実行に移すのが難しい<突撃>。
「1泊とかで…位置情報とか使えば、慎也の現在地は大体わかるし…何か決定的な証拠が撮れるかも!」
「あいかさん!」
恵理子さんの声色が、厳しいものに変わります。
「…うまくいくとは限らないですよ?1泊じゃ、伊藤さんとモナが一緒にいるところを撮れないかもしれないし、
無駄になるかも…!」
「…それでも、夫が話してくれない以上、彼女に聞いてみるしか方法はないですし…!」
そう、最悪夫が会社にいない隙に、会社に突撃してモナから話を聞くって手段もあるかなって思っていました。
モナは日本語通じるし、しらばっくれられるかもしれないけど、突然の話し合いなら口裏合わせたりも充分にはできないはず。
夫の話との矛盾点を探せばいい…!
「…本気なんですね…?…でもあいかさん、言葉も分からず、土地勘もなく…どうするんですか?」
「まあ、私は一度行っていますし…言葉は不安ですけど…」
「あっちって、英語も通じるんですよね?」
「ですね。現地語と英語と両方話している人が多かった…かなぁ…どの道私は英語もできないので大体の感じなんですけど…」
…言葉に関しては不安しかない!
でも、現地にまさか私がいるとは思っていないであろう夫とモナが、油断して何かをやらかしている可能性に賭けてみようと思ったのです。
するとそんな私の決意に触発されたのか?
「わかりました!じゃあ、私も行きます!」
一呼吸おいて、
「えぇえええええ?!?!?!恵理子さん?!?!??!」
「私一応結婚前は海外在住だったので、英語話せますし!人手がある方が調査もしやすいでしょうし…
もしご迷惑でなければお付き合いさせてください!」
テテレテッテッテーン♪ エリコ ガ ナカマ 二 ナッタ!
そんなRPG風の音楽が頭に響き渡ります。
「もちろん心強いですけどそれは!でもご主人とか!大丈夫ですか?!」
「中村なら何とでもなりますよ!いい大人なんだし数日くらい!
…あっちであいかさんが困っているかもって心配するより、一緒の方が私も気が楽ですし!」
言葉に不安がある私にとって、恵理子さんの申し出はとてもありがたい…
でも…赤の他人である恵理子さんにそこまで甘えてしまってもいいのだろうか…?
「実は…私たち、不妊治療中で…。でもあまりうまく行ってなくて、ちょっと治療をお休みしたいなって。
海外に出るのも私の気晴らしになるかもって。すみません、私の事情もあるんです…」
恵理子さんの悩みを初めて聞きました。
確かに恵理子さん夫妻は私たちよりも結婚生活が長いはずなのに、お子さんがいないことは少し気になってはいたのです。
色々なご家庭の考えもあるだろうし、わざわざ聞いたりもしませんでしたが、やはり…と言う感じでした。
「そうだったんですか…そう言うことなら、ご一緒していただけるのは私も助かります!」
こうして、1泊2日の突撃訪問が決定。
私の仕事の休みに合わせて、かなりハードな日程に。
両親には夫のところにどうしても届けなくてはいけないものがあると伝えました。
夫は、私が位置情報を共有していることにまだ気付いていません。
なので、数日滞在したくらいで私が彼の現地住所を把握しているとも思っていないはずです。
私は数日にわたり、夫の行動パターンをチェック。
立ち寄る場所、時間、会社への経路など、全てメモしました。
到着は現地時間昼過ぎ。
金曜日なので夫は仕事の後に呑みに行く可能性大!
到着後すぐに会社に張り込みすれば、モナの動向もわかるはず!
1泊とはいえ、前回のトラウマから、娘と離れるのはとても辛いものでした。
…娘も連れて行こうかと本気で考えましたが、流石に無理があります。
出発前、娘をぎゅっと抱きしめて
(必ず証拠を撮ってやる!)
と胸に誓って、私と恵理子さんは機上の人になりました。
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サレ妻@あいか
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