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日本人の、慎也さんじゃ、無い?


「どう言う事?!」


もしかして


 モナの発言の意味が全くわからなかった私と違い、恵理子さんはすぐに何か気付いたようです。


「流石に中村の嫁さんは気付いた?あいかはわかんないでしょ?だから知らないほうがよかったのに


 まだ頭の中が混乱している私をよそに、どんどん話は進んでいきます。


もしかして伊藤さんは二重国籍なんですか?」


(二重国籍?!)


「はーそうだよ。俺は日本とA国の国籍があるの。だから日本人としてはあいかの夫だけど、A国人としてはモナの夫ってわけ」


 色々観念したのか、夫はすらすらとカラクリを話し始めました。


 夫はA国で産まれて、A国は出生地主義の為国籍を取得。


 両親は日本人なので、血統主義の為日本の国籍も取得したとのこと。 


「でも、それ違法ですよ!日本は二重国籍を認めていないはず!」


「はっ!そんなの日本だけだよ!国籍を選択するっていうのはあくまで義務ってだけで、別に罰則がある訳じゃないしみんな国籍保持してるよ!」


 要は私、現地妻でしかなかったということなの?


「確かにそれなら不倫では無いかもしれないけど?やってることはただの重婚でしょ!


 私たちと夫婦でいる意味、家族でいる意味なんてないじゃない!」


「わかってないなぁあいかはいつも言ってるだろ?俺はあいかも娘も愛してるんだよ!別れたくないの!」


「じゃあどうしてモナとも結婚したの?!私にもモナにも不誠実だと思わない?!私と娘を愛してるなら、モナと別れるべきでしょ!」


 気付いた時には、涙が溢れていました。


 堂々と私と娘を愛しているという夫。


 でも、隣にいるモナの存在が、どうしても頭から離れません。


「だからそれはできないんだって!」


 そこでずっと沈黙していたモナが、とうとう話し始めました。


「オクサン、ワタシ、慎也サントワカレル、デキナイヨ」


 モナは全く感情の揺らぎを見せないまま、続けます。


「ワタシノ家、トッテモ貧乏。兄弟イッパイ。ワタシコノ国カラ出テ働キタイ。ソノタメ二A国ノ永住権必要ネ」


 モナは辿々しくもしっかりとした日本語で説明してくれました。

 

 自分の国から出て働くためにはビザが必要なこと、そして労働ビザは簡単には取れないという事、A国で働くためにはA国の人と結婚して永住権を取るのが一番手っ取り早いという事。


(だからって!)


「オクサン、日本、子供イル、親イル。コマッテナイ、チガウ?ワタシ困ッテル。


 慎也サン知ッテテ、結婚シテクレタ。優シイ人。ワタシ別レル、ナイヨ」


「わかった?これは人助けなの!俺が大切なのは日本の家族!でも困ってるモナを放って置けないだろ?!」


 となんだかんだで美談にまとめようとする夫に待ったをかけたのは


「でも、それなら同棲する意味ないですよね?伊藤さんの言ってる事と矛盾しません?」


(恵理子さん!)


「え?でも、ほら色々疑われたりしたら困るじゃん!」


「だからって、結婚式までする意味あります?」


「結婚式はモナのビザの申請のために必要だったんだよ!」


 恵理子さんはガンガン矛盾点を指摘していきます。


「じゃあ一緒に住む意味は?」


「それもビザのためだし。偽装夫婦だと思われたらビザが下りないから、仕方なくだよ」


「じゃあ、半裸のモナさんがベッドにいた事は?そもそもベッド1つしかないじゃないですか!」


「ウルセェな!お前に関係ないだろ!部外者は黙ってろよ!」


 夫、ガチギレです。


 いきなりの夫の大声に、恵理子さんもビクッとなっていました。


(でも、ここで負けるわけにはいかない!慎也がキレるって事は、それは彼にとってとても都合が悪いことを突っ込まれたってことだから!)


 私は恐怖心を表に出さないよう、あくまで冷静に夫に指摘します。


都合が悪いからって大声で恫喝するのやめて。ちゃんと録音してるからね。


 で?どうなの?私は『もうちょっとイチャイチャしよ』って言ってた慎也の声を聞いたし、録れてると思うよ?」


 それに、私には勝算がありました。


「可哀想なモナを助けるため?それにつけ込んで手を出したの?それってものすごいクズのすることじゃない?


 ただの不倫より人間として終わってるよね?」


 プライドの高い夫が、弱みにつけ込んで女性になんて話に、素直に頷くわけがないのです!


「だーかーらー!そこは合意なんだって!」


(ほーらね)


「合意って何が?合意の上でやっちゃってるなら、それは人助けとかじゃなく、ただの重婚でしかないじゃない」


 私はさらに続けます。


「たとえ国籍が2つあって、1つの国籍につき1人としか結婚していないとしても、それ法律的にアウトなんじゃないの?


 私との婚姻が先なんだから、訴えればモナとの婚姻は無効にできるはずだよ?」


「はっ!」


 夫の十八番、鼻で笑うと、こう言いました。


「だーかーらー?何言っちゃってんのあいか?馬鹿だな。英語も現地語も出来ないお前が、どうやって訴えんだよ!」


 

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