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まだあんな事言ってる!」


「でもまぁ想定の範囲内じゃないか。予想通り慰謝料のところに食いついてきただろ?」


 そうなんです、私たち、慰謝料なんて最初から貰うつもりはありませんでした。


 多額の慰謝料を請求、そしてその後慰謝料を減額・またはなくすことで、夫に早々に離婚に同意してもらう、それが私たちの真の狙い。


 (あの話の通じない宇宙人相手に長く争うのは無意味だしね


 ここまで色々計画しなくても、さっさと調停に持ち込めば良いのでは?と思わなくもなかったのですが、私はできれば調停や裁判にまでは進みたくありませんでした。


 あちらが弁護士をつけてくると言うなら、こちらとしても弁護士に頼まざるを得ないかもね、とは話していましたが、出来るところまでは絶対に自分たちでやりたいと思っていたのです。


 金銭的な負担が大きくなる恐れがあるから、というのも理由の一つではありますが


 何よりも、あれだけ夫に『英語も現地語もできない馬鹿』『頭の悪い女』と罵られ続けた私に、どれだけのことが出来るのか、夫に見せつけてやりたかったのもありました。


「ま、そうだよね。とにかく計画を進めよう!次は会社だね」


 夫を離婚に応じさせる。


 そのためにはまだまだやる事がありました。


 次の日、義母は無事現地に着いたようで、夫からは『母さんマジで来たんだけど!』とメールが。


(やっぱりあのまま飛び立ったんだどれだけ過保護なのよ


 既読無視していると、夫からは続けて


『しかも三日もいるとか言ってるんだけど!あり得なくない?!あいかからも帰るように言ってよ!』


 と。


(知らないし!っていうか慎也とあの義母がいない日本なんて私にとってはパラダイスでしかないし!)


『まじウザい!っていうかしばらくメールできないかも!』


 その言葉通り、夫からの連絡はこのメールを最後にしばらく途絶えました。


(慎也からも義母からも連絡が来ない日々なんて平穏なんだろう!)


 そしてきっかり3日間、私は夫と義母のいない日本を満喫!


ずっとこのままならよかったのに!)


 

 そう思わなくもありませんが、そういうわけにもいきません。


 もちろんその後、夫からは着信がありました。


 私はすぐにスピーカーにし、レコーダーの電源を入れます。


(この一連の流れにも慣れちゃったなあ慣れたくもなかったのに)


『もしもし?』


『おまっ!ふざけんなよ!』


 最初っからブチギレている夫。


(これは例のアレがよほど効いたんだなぁ)


 私は計画が順調だと、夫の態度で確信しました。


『いきなり何?』


 ニヤニヤしながら、ただし声色には気をつけて私は夫に尋ねます。すると夫は


『あいかお前会社に何言ったんだよ!』


 音割れするほどの大声で、恫喝してきました。


 両親はそんな夫の声に、慌ててリビングまでやってきます。


(作戦、二の矢・発動!)


 私はあくまで冷静に夫に告げました。

 

『別に変なこと言ってないでしょ?ただ<扶養異動申告書>について問い合わせただけじゃない』


『余計なことすんなよ!ていうか俺に黙っていつから働いてたんだよ!ふざけんなよ!

 

 俺の稼ぎが悪いみたいに思われるだろうが!』


(心配するところは、そこ?)


慎也が生活費を振り込んでくれなかったんだから仕方ないでしょ?私たちにだって生活があるんだから


 私はさらに、心底何を言われているのかわからない、と言った声色で伝えます。


『だから忙しい夫の手を煩わせないために、自分で会社に手続きしたいのですがどうしましょうか?


 って問い合わせただけじゃない?何がいけないの?


 別に現地採用の女の子と夫が重婚してましたとかバラしたわけじゃないのに、責められる理由がわからないんだけど?』


 そう、当初時短で働いていた私でしたが、フルタイムでの再契約をしてもらえたことを機に、いよいよ夫の扶養から外れることになったのです。


 通常なら夫が会社に扶養家族である私が働きだしたので、扶養から外して欲しいと申告しなくてはいけないはずなのですが、私が働いているのを知らない夫がそんな申告できるわけがない!


 …ということで!



<夫は海外赴任を大変満喫しているようで、私も派遣として働きに出ないといけなくなりました。


 幸いフルタイムの契約になったので、夫の扶養から外して下さい。


 今後夫の扶養下に入ることは【永遠にない】と思いますので、今後も面倒な手続きをお願いすることになり大変恐縮ですが、何とぞよろしくお願いいたします>


 という手紙を会社の人事部宛に送っておいたのです。


 ドストライクに<不倫>とか<浮気>とか<重婚>とかを会社に伝えてしまうと、こちらが夫の名誉を毀損したことになる可能性もある、とのことだったので、あくまで『何かあったのかなぁ?!』と匂わせる程度で留めておきました。


『夫は海外赴任を満喫している』

『働かないといけない』

『今後扶養下に入ることは永遠にない』


 まあ、普通の感性をお持ちの方なら、浮かびますよね。「あ、この夫婦、離婚だな」と。


 



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