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 にへらっと笑いながら平気でそんなことを言い放つ夫に、一同は怒りを抑えきれません。


 私は怒りに震える拳を今にも振り下ろしてやりたくなりましたが、なんとか堪えて提案します。


それくらいにしておいたら?とりあえずここじゃ何だし、場所を変えようよ」


 夫は顔の前で大げさに手を振って断固拒絶。


「はぁ?!無理無理無理無理。


 会食があるって言ってるだろ!俺の将来がかかった大事な会食なんだよ!」


 しかし私は、そんな夫の言葉を完全に無視して男性陣に目で合図。


 中村さんと父は夫の両側に立ち、恵理子さんは後方、私は彼の持つ旅行鞄を強奪。


 全員で夫を車まで連行しました。


 最初は抵抗した夫でしたが、逃げられないと悟ると、不承不承といった態度で車に乗り込みます。


 父が運転。恵理子さんが助手席、私と中村さんで夫の両側に座りました。


「すみません中村さん!お車大丈夫ですか?!」


「大丈夫!こんなこともあろうかと、僕ら電車で来たんで!」


 殺伐とした雰囲気のなか、私と中村さんが話していると、夫が喚き出しました。


「お前らまじふざけんなよ!誘拐か?!犯罪だぞこれ!


 俺は会食なんだよ!俺の未来がかかってるんだよ!責任取れんのかよ!」


責任とるって伊藤が一番口にしちゃいけない言葉だよね」と中村さん。


「悪いけど慎也くんの未来なんかより、娘と孫の将来の方が100倍大事なんだよね」と父。


「お二方、被ってますよ〜!」と恵理子さん。


未来がかかってるってどうせお義父さんのコネでA国に就職先斡旋してもらうための顔見せか何かでしょ?


 家族から逃げる算段をする前にさぁ現在の事をちゃんと精算してくれないかなぁ?


 私も中村さんも、暇じゃないのよ。あなたみたいな親のスネ、丸噛り野郎と違ってさぁ!」


「まじうぜー


 そこからは夫も黙り、程なく私たちは実家近くのファミレスに到着しました。


 私、父、そして私の向かいに夫、中村さん、恵理子さんの順で座ります。


 まず口を開いたのは恵理子さんでした。


「念のため、これからの会話は全て録音させてもらいますね。


 私たちは第三者として立ち合います。


 中村には伊藤さんの<会社が理由>の場合、速やかに確認をとってもらいますので」


 私も持っていたレコーダーのスイッチを入れます。


「とは言っても、話は簡単です。慎也、離婚してください。理由は言わなくてもわかってるよね?」


 夫はやれやれと言ったように肩をすくめて


「またそれ?もう話はついたじゃんモナとはもう別れたし、離婚する理由なんてひとつも無いだろ?」


「別れたって口では何とでも言えるよね?証拠は?」


 すると夫は


「これ見ろよ!」


 と長袖の裾をめくりました。


「俺刺されたんだぞ!それが何よりの証拠だろうが!別れ話したからこんな目にあったんだからな!」


 ………


「ちょ伊藤オマエいくらなんでもそれは


「それが証拠?」


「本気で言ってます?」


 白ける私たちを見て、夫は顔を真っ赤にして怒鳴ります。


「何でだよ!別れ話をしなきゃこんな怪我負うわけないだろうよ!」


うんそもそも慎也、怪我は事故だって言ってなかったっけ?」


………


 


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