
にへらっと笑いながら平気でそんなことを言い放つ夫に、一同は怒りを抑えきれません。
私は怒りに震える拳を今にも振り下ろしてやりたくなりましたが、なんとか堪えて提案します。
「…それくらいにしておいたら?とりあえずここじゃ何だし、場所を変えようよ」
夫は顔の前で大げさに手を振って断固拒絶。
「はぁ?!無理無理無理無理。
会食があるって言ってるだろ!俺の将来がかかった大事な会食なんだよ!」
しかし私は、そんな夫の言葉を完全に無視して男性陣に目で合図。
中村さんと父は夫の両側に立ち、恵理子さんは後方、私は彼の持つ旅行鞄を強奪。
全員で夫を車まで連行しました。
最初は抵抗した夫でしたが、逃げられないと悟ると、不承不承といった態度で車に乗り込みます。
父が運転。恵理子さんが助手席、私と中村さんで夫の両側に座りました。
「すみません中村さん!お車大丈夫ですか?!」
「大丈夫!こんなこともあろうかと、僕ら電車で来たんで!」
殺伐とした雰囲気のなか、私と中村さんが話していると、夫が喚き出しました。
「お前らまじふざけんなよ!誘拐か?!犯罪だぞこれ!
…俺は会食なんだよ!俺の未来がかかってるんだよ!責任取れんのかよ!」
「…責任とるって…伊藤が一番口にしちゃいけない言葉だよね…」と中村さん。
「悪いけど慎也くんの未来なんかより、娘と孫の将来の方が100倍大事なんだよね」と父。
「お二方、被ってますよ〜!」と恵理子さん。
「…未来がかかってるって…どうせお義父さんのコネでA国に就職先斡旋してもらうための顔見せか何かでしょ?
…家族から逃げる算段をする前にさぁ…現在の事をちゃんと精算してくれないかなぁ?
…私も中村さんも、暇じゃないのよ。あなたみたいな親のスネ、丸噛り野郎と違ってさぁ!」
「まじうぜー…」
そこからは夫も黙り、程なく私たちは実家近くのファミレスに到着しました。
私、父、そして私の向かいに夫、中村さん、恵理子さんの順で座ります。
まず口を開いたのは恵理子さんでした。
「念のため、これからの会話は全て録音させてもらいますね。
私たちは第三者として立ち合います。
中村には伊藤さんの<会社が理由>の場合、速やかに確認をとってもらいますので」
私も持っていたレコーダーのスイッチを入れます。
「とは言っても、話は簡単です。慎也、離婚してください。理由は言わなくてもわかってるよね?」
夫はやれやれと言ったように肩をすくめて
「またそれ?もう話はついたじゃん…モナとはもう別れたし、離婚する理由なんてひとつも無いだろ?」
「別れたって口では何とでも言えるよね?証拠は?」
すると夫は
「これ見ろよ!」
と長袖の裾をめくりました。
「俺刺されたんだぞ!それが何よりの証拠だろうが!別れ話したからこんな目にあったんだからな!」
………
「ちょ…伊藤…オマエ…いくらなんでもそれは…」
「それが…証拠…?」
「本気で言ってます?」
白ける私たちを見て、夫は顔を真っ赤にして怒鳴ります。
「何でだよ!別れ話をしなきゃこんな怪我負うわけないだろうよ!」
「…うん…そもそも慎也、怪我は事故だって言ってなかったっけ?」
「………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このお話が漫画化and書籍になりました!好評発売中!
そのほか人気のストアでご購入頂けます!
ピッコマ
LINE漫画
書籍は11/18に第1巻が発売されます!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▼目次▼
1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30
31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60
61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/72/73/74/75/76/77/78/79/80
→次回のお話はこちらから
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※毎日15時ごろ投稿して行きます
アルファポリスでも投稿しています↓こっちの方が先まであります☺️
シナリオ版はこちらから↓





コメント