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「中村さん


「あなた!」


「どう考えてもそれはおかしいでしょう!あいつは有責配偶者で娘さんの父親ですよ?!


 このまま離婚だなんてそんなの絶対駄目ですよ!」


 中村さんの低く、よく響く声が場の空気を一新しました。


「確かにあいつらは宇宙人ですよ!全く話が通じないでもね、このままってわけにはいきませんよ!」


「中村さん!」


「あいかさん、諦めないで!今あなたの手元には記入済みの離婚届があるんです!


 失敗したって別に離婚がなくなるわけじゃないでしょう?!」


!」


「さっき伊藤にも言いましたが、養育費は子供の権利なんです。


 どうにかして、貰う方法を考えましょうよ!」


 中村さんの力強い言葉が、私たちの心にもう一度明かりを灯します。


でもじゃあどうすれば?」


例えばなんですけど


「なるほどこういうのはどうです?」


 私たちはその後も話し合いを続け、いくつかの仕掛けを施してから、解散しました。

 

 次の日、朝から恵理子さんは我が家に駆けつけ、一緒に事態を見守ってくれます。



 仕掛けが効いたなら、今日、また動きがあるはず




 10時。

 

 テレレテレレ



 きました!


『もしも


『あーいーかー!お前なに言ってくれてるんだ!馬鹿の癖に!ふざけんじゃねーぞ!』


 初っ端からブチギレている夫。


(想像以上に仕掛けが上手くいったみたい!)


 いつもならうんざりする夫の怒鳴り声も、今日に限っては違います。





 昨日、私は夫が出て行った後


『お義母さんもうダメです


 お義母さんに、震える声で電話をかけました。


『あいかちゃん?!どうしたの!?』


『慎也さんと今ようやく話せたんですけど離婚することになりました』


『そんな!』

 

 ショックを受ける義母に、私は被せるようにしてこう告げます。


『そう、だからもう慎也さん日本には「俺は家族から解き放たれてA国に骨を埋める」って


 私にも娘にももう会うことはない。あっちに家族を作って永住するって!』


?!ちょっと待ってちょうだい!それは話が違うわよ!』


『お義母さん、彼に500万円渡すんでしょ?私への迷惑料って言ってたあのお金。


 慎也さんは事業を起こして私にも分配するって言ったんですよね?』


『そうよ!どうしても海外に行きたいなら援助はしてもいいって


 私は義母の言葉を遮ります。


『でも彼はそんなつもりないって言ってましたよ?』


そんな!私はあくまであいかちゃんと離婚しないって条件で!』


そうなんですか?でも実際私の手元には彼の署名入りの離婚届がありますよ?


 どういうつもりなんでしょうね?


 ああ、そっか。そういうことにしてあちらで


 私はどんどん義母の不安を煽っていきました。


『どう言うこと?!あちらで何?!』


お義母さんならわかるしょ?彼のこと一番理解されてるじゃないですか。


 この状態私と離婚して500万円なんて大金持ってA国に行くんですよ?


 慎也さん、きっともう死ぬまで日本には戻りませんよね


『そんなのダメよ?!絶対ダメ!』


『でも、それをわかっていて彼に500万円を援助するつもりなんでしょう?


 ああお義母さんともこれでお別れですね。


 お義母さん私と孫だけでなく、息子さんとも縁が切れちゃいますねこの先大丈夫ですか?』



 


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