
「中村さん…」
「あなた…!」
「どう考えてもそれはおかしいでしょう!あいつは有責配偶者で娘さんの父親ですよ?!
…このまま離婚だなんてそんなの絶対駄目ですよ!」
中村さんの低く、よく響く声が場の空気を一新しました。
「確かにあいつらは宇宙人ですよ!全く話が通じない…でもね、このままってわけにはいきませんよ!」
「中村さん…!」
「あいかさん、諦めないで!今あなたの手元には記入済みの離婚届があるんです!
…失敗したって別に離婚がなくなるわけじゃないでしょう?!」
「…!」
「さっき伊藤にも言いましたが、養育費は子供の権利なんです。
…どうにかして、貰う方法を考えましょうよ!」
中村さんの力強い言葉が、私たちの心にもう一度明かりを灯します。
「…でも…じゃあ…どうすれば…?」
「…例えばなんですけど…」
「なるほど…こういうのはどうです?」
私たちはその後も話し合いを続け、いくつかの仕掛けを施してから、解散しました。
次の日、朝から恵理子さんは我が家に駆けつけ、一緒に事態を見守ってくれます。
…仕掛けが効いたなら、今日、また動きがあるはず…!
10時。
テレレ…テレレ…♪
…きました!
『もしも…』
『あーいーかー!お前なに言ってくれてるんだ!馬鹿の癖に…!ふざけんじゃねーぞ!』
初っ端からブチギレている夫。
(想像以上に仕掛けが上手くいったみたい…!)
いつもならうんざりする夫の怒鳴り声も、今日に限っては違います。
昨日、私は夫が出て行った後…
『お義母さん…私…もうダメです…』
お義母さんに、震える声で電話をかけました。
『あいかちゃん?!どうしたの!?』
『慎也さんと今…ようやく話せたんですけど…離婚することになりました』
『そんな…!』
ショックを受ける義母に、私は被せるようにしてこう告げます。
『そう、だからもう慎也さん日本には…「俺は家族から解き放たれてA国に骨を埋める」って…。
…私にも娘にももう会うことはない。あっちに家族を作って永住するって…!』
『…?!ちょっと待ってちょうだい!それは話が違うわよ!』
『お義母さん、彼に500万円渡すんでしょ?私への迷惑料って言ってたあのお金。
…慎也さんは事業を起こして私にも分配するって言ったんですよね?』
『そうよ!どうしても海外に行きたいなら…援助はしてもいいって…』
私は義母の言葉を遮ります。
『でも彼はそんなつもりないって言ってましたよ?』
『…そんな!私はあくまであいかちゃんと離婚しないって条件で…!』
『…そうなんですか?でも実際私の手元には彼の署名入りの離婚届がありますよ?
どういうつもりなんでしょうね?
…ああ、そっか。そういうことにしてあちらで…』
私はどんどん義母の不安を煽っていきました。
『どう言うこと?!あちらで何?!』
『…お義母さんならわかるしょ?彼のこと一番理解されてるじゃないですか。
…この状態…私と離婚して500万円なんて大金持ってA国に行くんですよ?
慎也さん、きっともう死ぬまで日本には戻りませんよね…』
『そんなのダメよ?!絶対ダメ!』
『でも、それをわかっていて彼に500万円を援助するつもりなんでしょう?
…ああ…お義母さんともこれでお別れですね。
お義母さん…私と孫だけでなく、息子さんとも縁が切れちゃいますね…この先…大丈夫ですか?』
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