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何か思い当たることがあったのか、黙る義父。


『はぁ。君もわかってると思うけど、加奈江はちょっと精神的に弱いところがあるんだ。


 可哀想な女なんだよ。あんまりショックを与えないでやってくれないか』


『弱い?弱いと言うよりお義父さんのことがあってトラウマになっているだけじゃ無いんですか?』


君にはもう関係ないことだろう』


『残念ながらまだ離婚届が受理されるまでは他人ではないので。


 お義母さん、このままだと大変な感じですよ?いいんですか放っておいて?


 慎也さんを刺しかねないレベルで激昂していましたよ?』


『あいつはそんな大それたことが出来る女じゃない』


 大それたこと、ね


『そうですよねえ?この間慎也さん、刺されたばかりですもんね!


 まさにそんな大それたことが出来るわけないと思っていた現地妻に!』


 通話の向こうで、義父が大きなため息をついたのがわかりました。


『離婚のことはおいても、慎也さんを今また海外に出すのは、時期尚早なんじゃないですか?』


『全くどうして俺がこんな面倒なことに巻き込まれなくちゃならないんだ!』


『そう、今慎也さんを海外に出したら、彼の件は確かに片付くかもしれませんけどね?


 お義母さんは荒れそうですよね?そっちの方が面倒臭いんじゃないですか?』


『あいつらはいつもそうだ!俺を煩わせることばかり!』


(煩わせる?あなたが一番、家族を煩わせているんじゃないんですか?!)


 そう思った私は、義父に最大級の嫌味をぶちかましてやることに


いずれにせよ、私はそれをご忠告したかっただけなので。


 私はご夫婦のことには口を出しませんよ?でもねえ?


 愛する息子が"自分を騙して海外に逃亡した"って思い込んでるお義母さんと、毎日顔を合わせるのはとっても大変そうですね?


 息子さんは海外で自由に生きてるのに不公平ですよねえ?』


 まあ、息子さんの尻拭いをずっとしてきたから、あんな風にやりたいことしかやらない自分勝手な性格に育ってしまったのかもしれませんけど?と言外に匂わせつつ


言いたかったのは、それだけです。では』


 そう言って通話を終わらせようとした時、最後に義父からかけられた言葉はとても意外なものでした。


あんな面倒な奴らに付き合わせて悪かったな。君はうちの息子には勿体ないくらい賢い女性だ。


 孫を頼む。俺はあんな奴らでも家族だからな見捨てるわけにもいかん。元気でな』


 こちらからの返事を待たず、義父との通話は終了しました。

 

 (最後だけかっこいいこと言ってたけど面倒な奴らにはあなたも含まれてますよ!)


 スピーカーで全てを聞いていた中村夫妻と父は


「なんか最後かっこよかったですね


「でもあの人がある意味元凶なのによくあんなこと言えますね


「なんだかんだ理屈をつけてるけど要はお義母さんの相手の方が面倒だって冷静に判断しただけじゃ


 と三者三様の意見をお持ちのようでした。


 まあ、あの格好付けの夫の父親らしくて良いんじゃないでしょうか


「でもまあ、泣き寝入りする前にちょっとでも出来ることがあって良かったかなって。


 勝負は明日に持ち越しになりそうですけどね」


「いよいよ、伊藤さんにギャフンと言わせられますよね!?」


 そして、冒頭の夫ブチギレ通話の場面に戻ります。 



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