「なんだよ喜んでくれないの?!あいかと娘のためにわざわざチケット取ってやったのに!」

先ほどまでのご機嫌が嘘のように、豹変した夫は私を非難しだしました。

「いきなりすぎるよ!それに娘の荷物だって凄い事になるし…抱っこしないと寝ないし、私一人で連れていく自信ないよ!」

私も必死です。

おむつやミルク、着替えにおもちゃに…大荷物で見知らぬ土地に行くなんて絶対に無理。

何とかあきらめてもらえるように交渉しました。

しかし夫は…

「なんだよ!

異国で一人頑張ってる夫に会いにも来ないのかよ!

あいかがそんな冷たい女だと思わなかったわ!」

とブチ切れるばかりで話になりません…。

「…冷たいって…私だって会いたいに決まってるじゃん!

でも今は…」

言い訳する私を遮って、夫は

「もういいよマジでありえねー

と一方的に通話を打ち切ってしまいました。

一応かけなおしましたが…

その後は電話を取ってもらえず

はじめての育児疲れやホルモンの関係もあって涙がとめどなく溢れてきました…。

酔っていたから?だからあんなに攻撃的だったのかな?
 
夫があんな風に私を責めるなんて、初めてのことでした。

私は夫に対して余程悪いことをしているのではないか…

電話も滞りがちだったし、娘の事ばかりで夫を蔑ろにしていたのではないか…

そんな思いがグルグルと私の中で渦巻いていました。

でも無理だけどな!

そして次の日の夫からのLINE。

『昨日は言い過ぎた。ごめんな。でも寂しくて…

あいかと娘の写真を見てたら、会いたい気持ちが抑えられなくなった…』

遠い異国で、一人で、お酒を呑みながら家族の写真を見ていたら…

そんな光景が頭に浮かんで、やりきれない気持ちになりました。

しかしそんな私の感傷も、次のLINEで打ち消されることになります。

『だから頼む!一生のお願い!

会いに来て!』


まだ言うんかーーーーーーい。

しかしこれだけでは終わりません…。

『言葉が違う、文化も食べ物も違う場所で頑張ってる夫のお願いだよ?聞いてくれるよね?』
『父親らしいことしたいんだよ!』
『写真だけじゃ耐えられないよ!お風呂入れたり抱っこしたりさせてくれよ!』
などなど

怒涛のLINE攻撃

『あ、てゆーか、ビザの関係とか給料の振込口座の関係とかで、どの道あいかはこっちこないとダメだわ。』

…どういうことでしょう?

『ちょっと待ってどういう事?!』

既読スルーを貫いていたのですが、さすがにこれは放ってはおけません。

すぐに夫に返信しました。すると夫からは驚きの内容が明かされたのです。

『なんか書類に不備があったらしくて。

あいかが直接こっちの大使館に来ないといけないみたいなんだよね。

振込も今はマネロンの問題とかで銀行にちゃんと本人確認がいるみたいでさ。』

今にして思えば…どうして夫の書類に私の確認が必要なのか、

振込も自分の日本の口座に振り込めばいいのに私の口座を使う必要があるのかとか

色々突っ込みどころ満載なのですが…


この時は私も【海外で暮らすこと】に必要な書類などについて無知だったこと

そして昼夜問わずの授乳生活で頭がよく働いていなかった事もあり

『そんな…日本で手続きできないの?!もしくは郵送とかメールじゃダメ?!』

『ダメなんだって。だからどっちにしても来てもらわないと…』

夫の思うツボな話の展開になってしまいました。

『あいか一人でちゃっと来てちゃっと帰ればいいじゃん!

何のための実家なんだよ!

娘だってミルク飲むんでしょ?

あいかにだって休暇必要でしょ?

ちょうど良い機会じゃん!

別に頼んでないし、夫のわがままをかなえるために実家にいるんじゃないけどね

『書類ちゃんとしないと俺ここで仕事できなくなっちゃうんだよ!

送金も出来なかったら、あいかだって大変だろ?!』

夫が海外で仕事が出来なくなるのは別に困りませんが

送金してもらえないのは困ります。

当時実家とはいえ、出産一時金と手当だけではかなり生活が苦しくなっていました。

『わかった…行くよ…』