「恥って何?
何も言われずに疲れたって言ってるのに連れてきたのは夫でしょ?!
もう嫌だよ私。早く帰りたいよ。誰のために、何のためにここまで来たと思ってるの?!

車の中なので若干声も大きめです

「まあまあそういちいい怒るなよ。
俺さ、本当にあいかが来るの楽しみにしてたんだよ!
いつも日本で子育て頑張ってくれてるあいかに…
ここ見せたい、あそこで食べさせてやりたいって色々計画してるんだわ」

そして今回の旅一番のどや顔で、夫は言いました。

「だからさ、頼むからイライラしないで、俺の計画に乗っかって楽しんでくれたらそれでいいから!

頼んでもいない計画とやらに連れまわされるのかと、この時本気で即刻帰国したくなりました。

しかし義務教育レベルの英語しかできない私…
現在地がどこかも把握できていない外国の街から空港まで行って飛行機のチケット取りなおして勝手に帰る…それは現実的に見てかなり高難易度のミッションでした…。

それにやっぱり久しぶりに会った夫と喧嘩別れしたくない。

優しくされたい。

そう思った私は、無理やり気持ちを切り替えて、できるだけ夫の機嫌を損ねないように振舞うことになりました。

「俺の気持ちわかってくれた?
じゃあこれからいいところに連れて行ってあげる!」

そういって少しご機嫌になった夫に連れていかれたのは、地元の人たちでにぎわうレストランでした。

「ここ、ガイドブックには載ってない超穴場なんだよ!やっぱさー観光客向けのところは値段も高いし、味もなんていうの?外国人向けにしたいんだろうけど正直そこまでレベル高くないっていうか、地元民と同じものを食べて美味しいって思える感性を俺は大事にしたいわけ。あいかわかる?俺のこういう姿勢って割と特別みたいで…本社でもさ…

別に聞いてもいないことをぺらぺらと喋りだす夫。

正直会話の内容に全く興味を持てませんでしたが、とにかく機嫌を損ねたくない一心で、私は「へーそうなんだ」「すごいねー」を繰り返すロボットのようになっていました。


「俺のおすすめでいい?」


「うん、わかんないし任せるよ」


そして運ばれてきたのは…見事に香辛料たっぷりの油でギトギトな胃に重そうなメニューばかり…

「うまそ!これマジおすすめだから!」

(ただでさえ疲れてるって言ってるのにこんな重い飯食えるか


でも文句を言ったらまた機嫌悪くなるかな…と察した私は、付け合わせの野菜などを選んで口に運びました。

「ほんとだー!美味しいね!(野菜が)」


「あんま進んでなくない?何?おなかすいてなかった?」


「うん、機内でも食べたし…私は大丈夫だからいっぱい食べて!」


「一人でこの量無理でしょ
あいかってもっと食べてたでしょ?好きそうなもの選んでやったんだけど」

「今はまだちょっとそこまでおなかすいてないだけで、私好みの味だよー!さすが夫だね!」

「ふーん、まあ気に入ったなら良かったよ」

あまり盛り上がらない食事が終わり、
夜景がきれいだという名所に連れて行ってもらいました。
車内では娘の近況を話したり、
夫の仕事の話を聞いたりと
なんやかんやで仲良く過ごせていました。

「どう?この景色…これをあいかに見せたかったんだ!

俺はね、この風景にずっと残るようなものを造りたいんだよ!」

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※写真はイメージです

夜景をバックに熱く夢を語る夫…。
私はそんな夫を『素敵♡』というような目で見つめる、そんな演技を必死でこなしていました

この時の私なら、月影先生に白目むいて『恐ろしい子…!』と言ってもらえたはず!

(早く帰って寝たい…その一心でした)